腹痛・下痢・便秘・血便
Abdominal pain, Diarrhea, Constipation, Bloody stool
腹痛・下痢・便秘・血便
Abdominal pain, Diarrhea, Constipation, Bloody stool
腹痛とは、「お腹が痛い」という症状を総称したものです。痛みの部位、痛みの強さ、鈍い痛み(鈍痛)、さしこみ痛(疝痛)、発症のしかた、併発している症状などによって原因を特定します。胃や腸といった消化器系に起因するものだけでなく、循環器系、泌尿器系、婦人科系などに起因するものもあります。
便の水分が異常に増え、液状またはそれに近い状態を「下痢便」、通常より少し軟らかい状態を「軟便」といいます。下痢便や軟便を繰り返し、腹部不快感や腹痛を伴う状態を「下痢もしくは下痢症」といいます。理想的とされるバナナ状の便の水分量は70%~80%ですが、これが80%~90%になると「軟便」、水分量が90%を超えると水様便となり「下痢便」の状態になります。
腸の働きが異常な状態になった時に下痢は起こります。正常な腸では「ぜん動運動」という運動により、腸の内容物を肛門側に送ります。内容物が腸を通過する際に、内容物に含まれる水分が体内に吸収され適度な水分を含む便になります。
この時、なんらかの原因でこの「ぜん動運動」が異常に活発になった時や水分量の調節機能に障害が起きた時に便中の水分が増加して「下痢便」や「軟便」になります。
腸の「ぜん動運動」が過剰になった場合、腸の内容物が急速に通過するため水分の吸収が十分に行われません。そのため、液状の糞便となり下痢便や軟便になります。
また、腸から体内への水分吸収が不十分な時や、腸からの水分分泌が増えると、腸の中の水分が異常に多くなり下痢便や軟便になります。
便秘症とは、慢性便秘症診療ガイドライン(2017年)において、「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ適切に排出できない状態」と定義されています。また、日本内科学会では「3日以上排便がない状態、または毎日排便があっても残便感がある状態」とされています。
慢性便秘症診療ガイドライン(2017年)では、便秘症の診断基準は下記のように定められています。
上記6項目のうち2項目以上を満たす場合には、「便秘症」と診断されます。また、「慢性」の診断基準は「6ヶ月以上前から症状があり、最近3ヶ月間は基準を満たしていること」と定義されます。「とくに症状がなければ、毎日出ていなくても便秘ではない。」ということも明示されています。
便秘は、便が腸の中を進んでいくなかで、水分が吸収され少なくなることと強く関係しています。
口から入る食べ物・飲み物の水分は1日約2リットル。それに胃腸から分泌される消化液が加わりますので、大腸には大量の水分が流れ込みます。その水分の大半は、大腸を通過する際に吸収されて、食べ物の残りかすが適度な硬さの塊になります。大腸内での水分吸収量が少し増えるだけでも便が硬くなり。便秘になりやすくなります。
便秘の原因は幅広く、原因が異なれば治療法も違います。そこで、原因別に4タイプに分けて解説します。
大腸や直腸の動きの異常による「機能性便秘」
最も多いタイプの便秘です。生活習慣やストレス、加齢などの影響を受けて、大腸や直腸・肛門の働きが障害された結果で起こります。わかりやすいように、さらに3つに分けて解説します。
【弛緩性便秘】
大腸を動かす筋肉が緩んで蠕動運動が弱まると、なかなか便が運ばれないために便秘になります。高齢者における便秘の原因として多いです。また、朝食を摂らなかったり、運動不足などの乱れた生活習慣による便秘も、これに該当します。
【痙攣性便秘】
大腸の蠕動運動に連続性がなくなり、便の通過に時間がかかりすぎて起こる便秘です。ストレスの影響が強いと考えられています。
【直腸性便秘】
運ばれてきた便が大腸から直腸に入ると、直腸のセンサーが働き便意を催します。そこでトイレに行くと、普段は肛門括約筋が緩み、排便に至ります。ところが、便意を習慣的に我慢していると、直腸センサーの感度が鈍って、直腸に便が入っても便意を催さなくなります。女性が便秘しがちな理由の一つです。また最近では、温水洗浄便座の水を肛門の奥まで入れるために直腸センサーの感度が鈍り、便秘となる人が増えています。
便秘症の治療では、食物繊維の多い食事を心がけることが大切です。そのほかにも、規則正しい食事や睡眠時間を十分にとること、適度な運動を行うこと、十分に水分摂取を行うことが重要です。
上記の方法で改善がみられない場合には薬物療法を行います。
!温水洗浄便座について
水の勢いを最大にし肛門の奥に水を入れて、その刺激で排便している人も少なくないと思います。これは自ら便秘をひどくしているようなものです。便秘を悪化するだけでなく、直腸の粘膜を保護している粘液を洗い流してしますので、粘膜が傷つき便意の感覚も衰えます。水の勢いを弱くして、肛門の外側だけを洗うのが正しい使い方です。
血便とは、便が消化管から直腸・肛門を通過する際に出血した血液が混じったものです。肉眼で明らかに出血したと判断できるものから、便の中に血が混じっていて見た目にはわからないけど便潜血検査で陽性反応が出て判明する、また排便後にトイレットペーパーに血液が付着する程度のものも、血便に該当します。これらの症状には何らかの病気が隠れている可能性が高いので、早めに医療機関を受診するようにしましょう。
出血している臓器によって、症状の現れ方も変わります。
肛門や直腸など、肛門から近いところから出血であれば、鮮血便(鮮やかな赤色の血)になります。胃や十二指腸からの出血であれば、タール便(黒色便)となります。大腸の奥の方からの出血であれば暗赤色の便がみられ、大腸の感染症や炎症が原因であれば粘血便がみられます。見た目には全くわからない場合でも便潜血検査で陽性を呈した場合には、痔や大腸ポリープ、そのほか大腸がんからの出血である可能性があります。
肉眼で明らかに出血したと判断できる場合には、早急に医療機関を受診しましょう。